も宿《やど》る紫、波の花にも初秋の空の雲にも山の雪野の霜にも大理石にも樺《かば》の膚《はだ》にも極北の熊の衣にもなるさま/″\の白《しろ》、数え立つれば際限《きり》は無い。色と云う色、皆《みな》好《す》きである。
然しながら必其一を択《えら》まねばならぬとなれば、彼は種として碧色を、度《ど》として濃碧《のうへき》を択ぼうと思う。碧色――三尺の春の野川《のがわ》の面《おも》に宿るあるか無きかの浅碧《あさみどり》から、深山の谿《たに》に黙《もだ》す日蔭の淵の紺碧《こんぺき》に到るまで、あらゆる階級の碧色――其碧色の中でも殊《こと》に鮮《あざ》やかに煮え返える様な濃碧は、彼を震いつかす程の力を有《も》って居る。
高山植物の花については、彼は呶々《どど》する資格が無い。園の花、野の花、普通の山の花の中で、碧色のものは可なりある。西洋草花《せいようくさばな》にはロベリヤ、チヨノドクサの美しい碧色がある。春竜胆《はるりんどう》、勿忘草《わすれなぐさ》の瑠璃草も可憐な花である。紫陽花《あじさい》、ある種の渓※[#「くさかんむり/孫」、第3水準1−91−17]《あやめ》、花菖蒲にも、不純ながら碧色
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