たいあた》りをくれて衝倒《つきたお》したりした。小さな黒は勝気な犬で、縁代の下なぞ白の自由に動《うご》けぬ処にもぐり込んで、其処《そこ》から白に敵対して吠えた。然し両雄《りょうゆう》並び立たず、黒は足が悪くなり、久しからずして死んだ。而《しか》して再《ふたた》び白の独天下になった。可愛《かあい》がられて、大食して、弱虫の白はます/\弱く、鈍《どん》の性質はいよ/\鈍になった。よく寝惚《ねぼ》けて主人《しゅじん》に吠えた。主人と知ると、恐れ入って、膝行頓首《しっこうとんしゅ》、亀《かめ》の様に平太張りつゝすり寄って詫《わ》びた。わるい事をして追かけられて逃げ廻るが、果ては平身低頭《へいしんていとう》して恐る/\すり寄って来る。頭を撫でると、其手を軽く啣《くわ》えて、衷心を傾けると云った様にはアッと長い/\溜息《ためいき》をついた。
二
死んだ黒《くろ》の兄《あに》が矢張黒と云った。遊びに来ると、白《しろ》が烈しく妬《ねた》んだ。主人等が黒に愛想をすると、白は思わせぶりに終日《しゅうじつ》影を見せぬことがあった。
甲州《こうしゅう》街道《かいどう》に獅子毛天狗顔をした
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