。
此頃の馳走《ちそう》は豌豆《えんどう》めしだ。だが、豌豆にたかる黒虫、青虫の数は、実に際限がない。今日も夫婦で二時間ばかり虫征伐《むしせいばつ》をやった。虫と食を争《あらそ》い、蠅《はえ》と住居《すまい》を争い、人の子もこゝさん/″\の体《てい》たらくだ。
午後|筍買《たけのこか》いに隣村まで出かける。筍も末だ。其筈である、新竹《しんちく》伸《の》びて親竹《おやだけ》より早一丈も高くなって居る。往復に田圃《たんぼ》を通った。萌黄《もえぎ》に萌《も》え出した苗代《なわしろ》が、最早《もう》悉皆《すっかり》緑《みどり》になった。南風《みなみ》がソヨ/\吹く。苗代の水に映《うつ》る青空《あおぞら》に漣《さざなみ》が立ち、二寸ばかりの緑秧《なえ》が一本一本|涼《すず》しく靡《なび》いて居る。
両三日来夜になると雷様《かみなりさま》が太鼓《たいこ》をたゝき、夕雲《ゆうぐも》の間から稲妻《いなずま》がパッと射《さ》したりして居たが、五時過ぎ到頭|大雷雨《だいらいう》になり、一時間ばかりして霽《は》れた。
袷《あわせ》では少し冷《ひや》つくので、羅紗《らしゃ》の道行《みちゆき》を引かけて、出て見る。門外の路には水溜《みずたま》りが出来、熟《う》れた麦は俯《うつむ》き、櫟《くぬぎ》や楢《なら》はまだ緑の雫《しずく》を滴《た》らして居る。西は明るいが、東京の空は紺色《こんいろ》に曇って、まだごろ/\遠雷《えんらい》が鳴って居る。武太《ぶた》さんと伊太《いた》さんが、胡瓜《きゅうり》の苗を入れた大きな塵取《ごみとり》をかゝえて、跣足《はだし》でやって来る。
最早夏に移るのだ。
[#地から3字上げ](明治四十四年 五月二十七日)
[#改ページ]
憎むと枯れる
戸を開《あ》けると、露一白《つゆいっぱく》。芝生《しばふ》には吉野紙《よしのがみ》を広げた様な蜘網《くものあみ》が張って居る。小さな露の玉を瓔珞《ようらく》と貫《つらぬ》いた蜘《くも》の糸が、枝から枝にだらりと下《さが》って居る。
門の入口に甘《あま》い香《かおり》がすると思うたら、籬根《かきね》にすいかずらの花が何時の間にか咲いて居る。
生々《せいせい》又生々。営々《えいえい》且《かつ》営々。何処《どこ》を向いても凄《すさま》じい自然の活気《かっき》に威圧《いあつ》される。田圃《たんぼ》には泥声《
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