、美味さうに吸つてから、獲物を大切さうに提げて寝台の小さな梯子を登つて行つた。
目をつむつてからも、私は何故か、上に寝てゐる猟人と、その獲物のことが気になつた。あの氷漬けになつたやうな鳥達が、私の夢の中まで忍び込んで来るやうに思はれた。
戸隠ゆきの汽車の中で、うとうとしてゐると、私は肩をたゝかれた。渋ぶさうに目をあけると、私を呼び起した男は目の前に立つてゐた。赤ら顔の髭のある人であつた。背も随分高かつた。「すみませんね」と低いが、よく通る声で云つた。
私と並んで坐ると、男はゆつくり外套の隠しから、小瓶を出してきた。どうやら酒が這入つてゐるらしい。膝の上に新聞を一枚おいたが、別にそれを読むのでもない、又すつかり目をさまされてしまつた私に向つて、話しかけてもこない。思ひ出したやうに、その小瓶の酒をちびりちびり飲み初めた。その内男は小瓶の詰をすると、それを脇にかゝへ、頭をうしろにもたせかけた。二三分もすると、気持ちよささうに鼾をかき出した。足の間には、ずしりと重さうな袋が置いてあつた。
汽車の窓は、まだうす暗かつた。この男の仕事を初める物の音に、私はもう一度目をさました。
男は袋
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