かし》い。長田の編輯している日曜附録に、つまらぬことを書かして貰って僅かばかりの原稿料を、併も銭に困って、一度に、月末まで待てないで、二度に割《さ》いたりなどして受取っているのだが、分けても此の頃は種々《いろん》なことが心の面白くないことばかりで、それすら碌々に書いてもいない。けれども前借をと言えば、仮《よ》し自分が出社せぬ日であっても、これまで何時も主筆か編輯長に当てゝ幾許《いくら》の銭を雪岡に渡すように、と、長田の手紙を持ってさえ行けば、私に直ぐ受取れるように、兎に角気軽にしてくれている。然るに、仮令銭は渡せない分とも、その銭は渡すことならぬ、というその銭は、何ういうつもりで書いたのだろう? 自分は平常《ふだん》懶惰者《なまけもの》で通っている。お雪を初めその母親《おや》や兄すらも、最初こそ二足も三足も譲っていたものだが、それすら後には向からあの通り遂々《とうとう》愛想を尽かして了った。幾許自分にしても傍《はた》で見ているように理由《わけ》もなく、只々懶けるのでもないが、成程懶けているに違いない。長田は国も同じければ、学校も同時に出、また為《し》ている職業も略《ほ》ぼ似ている。それ
前へ 次へ
全118ページ中75ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
近松 秋江 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング