行てたあ」
といって話すところによると、彼らが馴染《なじ》みはじめの時分男は二、三人の若い画家と一緒に知恩院《ちおんいん》の内のある寺院に間借りをして、そこで文展に出品する絵などを描いていた。仲間の中でも彼がひとり落伍者《らくごしゃ》でついに一度も文展に入選しなかったが、お園は昼間体のあいている時間を都合し始終そこへ遊びに行っていた。そして画師《えし》が画枠《えわく》に向っている傍について墨を摺《す》ったり絵の具を溶かしたりした。
 女あるじは笑っていっていた。
「三野村さんあなた、勉強をおしやすのにそないに女を傍に置いたりしてよう絵が描けますなあいうて私がきくと、そなことない、お園が傍についておってくれんと絵が描けんおいいやすのどす。……そうどすか、わたしまた何ぼ好きな女かて傍についていられたりしたら気が散って描けんやろ思われるのに、そんなこというてはりました」
 私は、二人の情交の濃やかであったことを聞けばきくほど身体に血の通いが止まる心地がしながら、惚れた女を思う男の心は誰も同じだと、
「私だってそのとおりですよ。私の傍に引きつけておくことが出来ぬ代りに遠くにいてどんなに彼女《あ
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