せ卑しい勤めをしているのであるから、いろんな男に近づきはあるにちがいない。どんな男があっても構わぬ。自分は猜疑《さいぎ》もしなければ、嫉妬もせず、ただ一と筋に真情《まごころ》を傾けて女の意のままに尽してやってさえいれば、いつかはこちらの真情が向うに徹しなければならぬ。ことさらにああいう稼業《かぎょう》の女はそんな嫉妬がましいことをいう男に対して厭気をさすのである。そう思って私は、三野村という男のことを全く知らぬこともなかったけれど、そんなことは彼女に向って戯談《じょうだん》にもあまり口に出したことはなかったのである。また私自身にしても、そんなことを思ってみるさえ堪えられない焦躁《もどか》しさに責め苛《さいな》まれるので、そんな悩ましい欝懐《おもい》をばなるべくそのままそっと脇へ押しやっておくようにしておいたのであった。が、今女あるじから初めて、入り組んだその男のことを聞くにつけ思い起したのは、去年の五月のころ女の家にいた時仏壇の奥から出て来た写真の和服姿の男がそれであろうと、そう思うと、その男と彼女との仲の濃《こま》やかな関係がはっきり象《かた》を具《そな》えて眼に見えて来た。私はちょ
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