湖光島影
琵琶湖めぐり
近松秋江

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)比叡山《ひえいざん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)老杉|蓊鬱《おううつ》たる

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「酉+焦」、第4水準2−90−41]《ひた》してゐた

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ほと/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 比叡山《ひえいざん》延暦寺《えんりやくじ》の、今、私の坐つてゐる宿院の二階の座敷の東の窓の机に凭《よ》つて遠く眼を放つてゐると、老杉|蓊鬱《おううつ》たる尾峰の彼方に琵琶湖の水が古鏡の表の如く、五月雨|霽《ば》れの日を受けて白く光つてゐる。湖心の方へ往復する汽船が煙を吐いて靜かに滑つてゆくのも見える。帆船が動いてゐるのも見える。そのあたりは山の上から眺めても湖水が最も狹められてゐる處で、向ふ側から長く突き出して來てゐる遠洲は野洲《やす》川の吐け口になつてゐる。北方
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