常に興味があった」
 こんなことを、柳沢は、さっき饗庭《あいば》もいる前で話していた。
 こちらは、柳沢がそんな意地の悪いことをするとは知らないから、胸に奸計《たくらみ》を抱《いだ》いていてお宮を傍に置いていたことはない。柳沢の方じゃそうじゃない。これが雪岡《ゆきおか》の呼んでいる売女《おんな》であると初めっから知っていて、口を利くにもその腹で口を利いている。鳥安なんぞへつれ出すにも、そういう胸に一物あってしていることだ。
 こういうと、お前は、つまらない、蠣殻町の女|風情《ふぜい》を柳沢に取られたといって、そんな他人聞《ひとぎ》きの悪いことをいうのはお止《よ》しなさい。あなたの器量を下げるばかりじゃありませんか。と、いうであろうが、それは私も知っているけれど、まあ、そんな具合で柳沢は最初お宮を呼んだのだ。そういえば、お前にも柳沢のすることが大抵判断がつくだろうと思って。
 そんな厭《いや》な思いをしながらも、やっぱり傍で見ていれば見ていてお宮の美目形《みめかたち》が好くって、その柳沢の買った女をまた買った。
 そうして疲れて戻《もど》って来ると、神経が一層悩まされてお宮のことが気にな
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