鳥羽家の子供
田畑修一郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)漸《やうや》く
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)御免|蒙《かうむ》る
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]
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松根は五人目の軍治を生んだ時にはもう四十を越えてゐた。子供の間が遠くて、長女の民子はその時他へ嫁いでゐた位だつたが、男の児と云つては、長男の竜一が漸《やうや》く小学校に上つた許《ばか》りであり、次の昌平は悪戯《いたづら》盛りで、晩年のお産のためか軍治は発育が悪く、無事に育てばよいがと思はれる程だつた。
松根の身体もそれ以後めつきり弱つた。気管支が悪いと医者に注意されもしたし、雨の日など寝て過したりした。だが、弱つたのはお産のためばかりでもなかつた。神経質で、何から何まで気のつき過ぎるやうな性分が、もうそれまでにすつかり心身を費ひ果してしまつた所もあるのだつた。次女の卯女子《うめこ》はもう娘になりかゝつてゐたので、家の中の仕事などは、松根の指図を聞いただけで大体やつてのけた。母が以前のやうではなく懶気《ものうげ》に身
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