石ころ路
田畑修一郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)吹き捲《まく》った
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)終日|呆然《ぼうぜん》として
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島へ着いた翌日から強い風が出て、後三日にわたって吹いて吹き捲《まく》った。雨も時々まじったが、何より風の強さに驚いた。島の人に訊《き》くと、こんな風ならしょっちゅうだと言う。もっとひどいときのはどんなだろうと思った。
僕の着いた日は、海にうねりこそあったが、穏かなうす曇りで、船から望んだときの三宅島はその火山島らしい円錐形《えんすいけい》の半ばの高さから下方は淡緑色に蔽《おお》われて、陸へ上るとすぐ、そこは黒砂のあまり大きくない浜で、そこから三十メートルぐらいの断崖《だんがい》についている急な坂路を上って、ゆるやかな傾斜地を走っているやや広い路に出たとき、あたりの土手にたくさんある灌木《かんぼく》はもう若々しい広い葉っぱを出しているし、路の両わきの木々も、それからところどころの樹の間から眺望《ちょうぼう》されるなだらかな山裾、それはしだいに盛り上って向うに島の中心をなす雄山《おやま》の柔か
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