を伐採《ばっさい》していた。訊くと路はすぐわかった。
今度はうんと急な路だ。そんなところも牛が上るらしく、ところどころに牛の踏みこんだ跡が段になってついている。水こそないが、石ころだらけの沢みたいな路だ。また、広っぱに出る。そこいらはすっかり灌木の原で、間々に柔かい芝草が生えている。そこをぐるっと廻るように行くと、もう小さな内輪山の下だ。いつの間にか外輪の中へ入ったのだ。熔岩の細かく砕けた原をまっすぐに、ちょうど上ったところとは反対側へ行って山の向う側の部落を見ようと思った。外輪の縁が凹んだところまで行ってみると、そこは眼のくらむような崖だった。ずっと真下までどれくらいか見当もつかない。岩の間に小さな路が匐《は》って下りているのが上から見える。崖の真下の岩場から下方はしだいに拡がった草地で、それはだんだんと林になり森になりして、一帯の山裾がごく小さいながらに、海ぎわまで手にとるように見える。海に近い方にはぽつりぽつり人家が見えた。
海は真青で、海岸が白く泡立っている。眺めているうちにだんだん前へ吸いこまれそうになる。この辺から思いきって飛んだらどの辺に落ちるだろうか。そう見当をつけ
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