について部落じゅうを歩いたが、何だか「タイメイ」さんのおかげでうっかりすると恥をかきそうだな、と気がついた。こんなに娘ばっかり探して歩くなんて、なんだか犬みたいな気がする。僕は、「タイメイ」さんがまたどっかへ行こうとするのを断って、さっさと宿屋へかえった。
 翌朝目ざめるとひどい吹き降りだった。一日じゅう閉じこめられていると、夕方になって一人の娘さんが、「タイメイ」さんを訪ねてきた。それは昨夜寝ているのをたたき起した農家の娘さんで、「タイメイ」さんが東京にいた時分やはり上京して女中奉公をしていたとかで、話の様子では「タイメイ」さんの世話にいろいろなったらしい。また、彼女がちょっと立った間に、この娘さんは今恋愛でなやんでいる、その相手は神着の妻子のある四十過ぎた、島で一番古い家柄の主人であること、そのために、いっしょになるわけにも行かず、別れることもできずちゅうぶらりんになっていることなど聞かされた。その人は僕も檜垣のところで会って知っていた。「タイメイ」さんは病気で禁酒だと言っていたが、欲しそうな様子もあるので、すすめるとよく飲んだ。この晩もそうで、飲みかつよく喋る。娘さんはお酌をした
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