負《しょ》ってくる娘さんに会った。「タイメイ」さんは彼独特の気軽な何だかからみつくような馴れ馴れしい調子で「やあ」と言って、それから何か話しかけた。紺絣《こんがすり》を着たその娘さんは体《てい》よく挨拶して、路の傍の駄菓子屋へ寄った。阿古村にある菓子製造所の娘で、ああやって卸《おろ》して歩くんですよ、とのことだった。また、途中で三人の小娘が荷を背負って行くのに追いついたがこの娘たちは阿古村から専売局の出張所のある神着まで煙草の買入れに来たかえりなのだ。
 僕は朝方出がけに檜垣のいる出張所でこの娘たちを見たので覚えがあった。「タイメイ」さんは彼女たちの後姿を見かけると、きゅうに足をはやめた。そして、何かとからかいかけた。まだほんの十四五歳ぐらいの娘たちは顔を見合せて、紅くなって笑うばかりだ。僕は彼女たちがいくらか当惑しているのを見ると、「タイメイ」さんを娘たちから引きはなそうと思って、気づかれないように足を速めたので、間もなく娘たちは後になったが、「タイメイ」さんは時々うしろを振りかえっていたが、ふいにニヤニヤして僕の顔を見上げ、「阿古村というところは村の娘が宿屋へ遊びに来ますぜ」と言っ
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