は足を踏ん張つたまゝ今泉に云ひかけた。こんなに彼の方から話しかけるなんてことは滅多になかつたので、よほど虫のゐどころがよかつたのだらうが、それでもいつものあの愚弄するやうな色は争はれなかつた。
「うむ」
 今泉は一寸いやな顔になりかけたが、
「今日は士曜日で、半休だからね」
 それは、やつぱり何となく「役所」臭かつた。
「ふうん。気楽な身分だね」
 徳次はすつかり感心したとも、又その反対ともとれる云ひ方だつた。
「フム」
 今泉はかすかに鼻のあたりを不満げにふくらませた。
 だが、急に機嫌をとり直した。そして、徳次が彼の口から聞くことでどんな表情になるかを期待しながら、ゆつくり相手の顔を見て云つた。
「さつき着いたばかりの新聞で見たんだがね、――堀内将軍がいよいよ凱旋されるさうだ」
 徳次は新聞なんかはとつてゐなかつた。ところが、町のずつと上手にある町役場では、すぐ近くのバスの発着所からいの一番に配達されるし、又県庁からの示達があるので、いろんな特種《とくだね》が入つた。今泉は早耳好きだつた。それに堀内将軍は聯隊長時代に今泉の上長だつた。その年の夏青島攻略がはじまつて、新聞に堀内将軍の
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