のくるくると廻るやうな、速い、曖昧な云ひ残しが、ふしぎに印象を残してゐた。

「あの訴訟はどうなつたのかね」
 と、房一は小谷に向つて訊いた。
「なに、訴訟?」
 この時、練吉が又小耳にはさんで訊き返した。が、明かにそれはさつきの小耳訊きとは様子がちがつてゐた。殆ど一人で盃を傾けてゐたせゐもあるが、つい今まで沈んでゐた練吉は僅かの間に一足とびに深い酔の中に入りこんでゐた。
「どこの訴訟だ。なに鍵屋、うん、相沢か」
 練吉の額は今青いと云ふより磁器のやうな冴えた白さに変つてゐた。目瞬きはぴつたりととまり、線を引いたやうな切れ目が深く長く、宛《あたか》も部厚い眼鏡そのものに入つたヒビ割れのやうに見えた。そして、
「なあんだ、まだ訴訟してるのか」
 と、無邪気に、呆《あき》れたやうに云つた。
「まだつて、はじまつたばかりですよ」
「まだ? ふん! よせ、よせ。阿呆らしい」
 練吉は顔をしかめ、手を振つた。
「おれは!――」
 と、何か威勢よく云ひかけたときだつた。小谷は急に聞耳をたてた。小谷ばかりではない、房一も――半鐘が鳴つてゐた。たしかに! それは、はじめ三連打を二度ほど、ちよつと途切れ
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