て云つた。どこで手に入れたのか、徳次は白い紙緒の藁草履をちやんとはいてゐた。
「へゝえ、わしらは用意がえゝですからね、あんな蜜柑箱みたいなもんはすぐこはれるにきまつてるから、家を出るときこゝにつけて来たんでさあ」
 と、腰をたゝいてみせた。そこにはまだ一足、紙衣の下からはみ出すやうに、ぶら下つてゐた。
「あゝ、まだ持つてる!」
 と、小谷は目を丸くした。欲しさうだつた。すると、逸早く、
「それをよこしたまへ。二足なんていらんよ」
 と、練吉が引つたくるやうにとつてしまつた。
 徳次は明かに房一にくれようと思つてゐたらしかつた。で、間が悪さうにそこに立ちはだかつたまゝ、あのきよろりとした目でしきりに練吉と房一を見くらべてゐた。
 腹に物がつめこまれると、さつきはあんなにへたばつてしまつた神主の一隊もどうにか元気がついたやうであつた。これからいよいよ町通りである。自分の家の前を、妻子や使用人達がずらりと見物してゐる中を、しやちこ張つて、堂々と歩かねばならないのである。で、大半はいつのまにか草履や下駄にはきかへてゐたものの、まだあの木箱をひきずるがらがらいふ音をたてて、紅い色の滲んだ、紙衣の
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