て歩いて来たことを見てもらへるといふ悦びが明かに漲《みなぎ》つてゐた。
「もうそんなにおよろしいんですの? すつかり御無沙汰してゐました。ほんとうに! よくおいでになれましたわねえ」
道平が口をうごかせるまでには随分手まどつた。
「あんまり、ぢつとしとつてもな、身体が生《な》まに、なるもんぢやから」
もともと口下手ではあつたが、まだ舌がもつれる風で、一口ごとに息をついて云つた。
彼は先だつて房一から全快祝ひに贈られたセルの上下を、仕立下したばかりのものを着こんでゐた。夏からふた月あまり寝こんだとは云へ、日焼けの浸みこんだ黒い皮膚の色は容易にとれないと見えて、今もそれが真新しいセルの、明い地色と際立つた対照をなしてゐた。
孫息子に手つだはれて、そろそろと縁側に腰を下すと、道平は何か云ひたげに盛子の顔を見まもつた。そして思ふことがうまく口に出ないときにやる、一心な、どこか苛々《いらいら》した目つきになりながら、殆ど癇癪を起しさうになりながら、やつと云つた。
「あんたも、おめでたいさうで」
彼はそれを云ひに来たのだつた。
盛子の妊娠を耳にしたのはまだ病気前のことであつた。だが、
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