い、怒張した顔があつた。いつのまにやつて来たのだらう、徳次はぎゆつと片手で押へつけられたまゝだつた。そして、房一の怒声を聞いた。
「きさま! あれほど云つたぢやないか。何んだこの真似は!」
 徳次は気が抜けたやうに、口のあたりをもごもごさせるきりだつた。
 何かしら、すつ飛んでしまつた。白い光るものも、鬼倉の隈取《くまど》りのやうに荒い皺の走つた顔も、それからあの、もやもやした怒りも。そして、ぼんやりとして次のやうな話がとり交はされるのを聞いてゐた。
「どなたか知りませんが、この男が御騒がせしたさうで、御無礼でした」
 房一は鬼倉に向つて叮重《ていちよう》に云つた。
 相手はさつきから黙つて、房一と徳次の様子を眺めてゐた。さすがに気が立つてゐるらしく、節くれだつた手首を食台の上でこねるやうに動かしてゐた。そして、徳次よりもはるかに手答へのあるらしいこの男が何者か見究《みきは》めようとして、どこか気を配つた様子だつた。
 そこに、房一は、酒のために紅くなつてはゐるが、そして、まだ額のあたりに筋張つた色が立つてはゐるが、稍《やゝ》前こゞみになつた半白の頭を見た。それは河原町の人などには見ら
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