た」といふ評判だつた。それが何か乱暴でも働いた、といふやうに伝つて、噂を聞いた老父の道平は河場からわざわざ様子を聞きに来た。
 庄谷はあの冷笑するやうな白眼で、物好に訊きたがる人に答へた。
「ふん。何でもありやせんよ。大方、腹でも痛かつたんだらう」
 が、要するに房一が腹に据ゑかねて座を立つたのはもつともだ、といふことに落ちついた。何でもなかつた。鍵屋の隠居が面喰つただけだつた。房一の方から云へば、彼は自分の存在を認めさせることになつた。それは、手ごはい、喰へない男、としての「医師高間房一」だつた。そして、こんな風に善かれ悪しかれ人に取沙汰される男は、河原町ではきはめて興味ある存在にちがひなかつた。
 小谷の店では実にあらゆる品を売つてゐたが、その中には僅かだが薬品類もあつた。したがつて、高間医院は小谷にとつて多少のお得意先でもあつた。今では、小谷は心易立てに注文のあつた薬品を「店主自から」ぶらさげて房一の所へ持つて行き、そのまゝ話しこむやうになつてゐる。

 房一の竿に最初のやつが掛つた。
「おつ」
 といふやうな声を出して、彼は満足と緊張とのためにあの調子外れな表情になつて、撓《し
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