る物腰で、房一の挨拶を受けたのだつた。

   第三章

     一

 日々は平凡に単調に過ぎて行つた。
 それは、開業当時のあの身体が自然と弾《はず》んで来るやうな、患者に向ふと必要以上に診察したり、相手が求める以上にくはしい説明を長々と熱心に云つて聞かせたり、忙しげに薬局と診察室の間を往来しながら待つてゐる人達に声をかけたり、さういふ房一の活気にみちた様子が見る人ごとに快い気持を惹き起させた、そんな張り切つた頃にくらべると、今はまるで時間が急にその歩みをとめて、のろのろと動いてゐるやうに感じられた。
 患者の多くは近在の農夫達であつた。それは大体に於いて、開業以前に予想してゐた通りだつた。鈍《の》ろい、ゆつくりした口調で声をかけながら、彼等はおづおづと高間医院の玄関を入つて来る。彼等は医者に診てもらふためにわざわざ河原町へ出て来るのではなかつた。農具とか種物とかを買ひに出て、ついでに立寄るのであつた。それで、彼等の病気はすでに治療の時期を失してゐるか、でなければ手のつけられない慢性のものが多かつた。
 さうかと思ふと、朝早くから農婦たちが背中に子供を負ぶつてやつて来る。それが唯
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