た時にはこの円味が消えてしまひ、あのどぎつい部分々々がばらばらに突出し一層強くなるやうに感じられる瞬間がある。それは理由なく盛子を恐怖させるものであつた。
 今、房一の顔に現れてゐるのはさういふ怒気だつた。ただ、それは盛子に向けられてゐるのでなしに、房一の内部に立ちはだかり、自ら押へつけしてゐる、それから来る圧迫感だつた。――

 鍵屋へ招かれた時から房一の頭を占めてゐた考へは、その席で恐らく河原町の人達が彼をどんな風に見てゐるかがはつきり判るだらうといふことだつた。かういふ集りでは皆が皆自分の据ゑられる席の上下を可笑しい位に気にする習慣を房一はよく知り抜いてゐた。
 それは莫迦げたことにちがひなかつた。だが、その莫迦げた習慣の中に今房一は身を以て入りつゝあるのを感じた。
 そこで自分がどんな取扱ひをうけるか、あたり前の医者としてか、それとも単に「芋の子」に過ぎなかつた高間道平の憎まれ息子としてか、房一は少からず興味を持つた。が、大体予測がつかないではなかつた。きつと、医者として認めたがらない気持がそのまゝ現れるだらう、と。
 若しさうだつたら、そのまゝおとなしく坐つてはゐられまい。そ
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