昨日その九州から来た連中を赤山へ案内して行つたちふぢやないか」
 横合から冷かすやうに口を入れたのは雑貨店の庄谷だつた。痩せた上に黒く日焼けがし、固く乾いたやうな顔には小さいが白味の多い眼がいつも人を小莫迦《こばか》にするやうに閃いてゐた。彼はさつきもその眼で入つて来たばかりの房一を見、房一が挨拶すると「あン」といふやうな声を出しただけで、すぐに話に聞き入つてゐたのだつた。
「いやネ、誰か赤山のことに精《くわ》しい者はゐないかつてんで、わたしの所へ来たのですね。まあ、案内するにはしたが、あの連中と来たら地の底でも見えるやうなことを云ふんで呆れたところですよ」
「何だらう、山師を煽《おだ》てて又一儲けしようてんだらう」
 わきから又誰かが冷かした。
「とんでもない、わたしの持山ぢやあるまいし、こつちは間で口を利いても礦山のことは素人《しろうと》だし、向ふは専門家でさあね。そんな煽てにのるやうな連中ぢやないよ」
 富田の仲買は表向きの商売ではなかつた。彼には小造りではあつたが格子戸の入つたしもたや風な家もあるし、山林や田地も人並みには持つてゐた。だが、それも地主として納るほどではない。用が
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