もほの暗く、したがつて一様にうすい埃を被つて沈んでゐるこれらの物が、今やいつせいに生き返つたやうに見えた。
 そして、これと全く同じ活気が、あの燃え残りの蝋燭の発する佗びしい、だが、ゆらめくやうな活気が今夜の法事で主人役をつとめてゐる神原直造にもあつた。
 彼は年に似合はず厚く生えた白髪まじりの頭を短か目に刈り上げ、多少猫背になりながら袴の両脇から手を差しこみ、心持肱を張つて坐つてゐた。それは何々翁肖像といふ掛軸を思はせるやうな古風な律義さと端正さを現はしてゐた。
「さやうで御座りますか。お忙しいところを御苦労さまで」
 銹《さび》のある低い声で入つて来る客に叮重に挨拶しながら、その度に手を袴の下から出して奥の間へ誘つた。この「さやうで御座ります」といふのが直造の口癖だつた。しかも、その言葉を口にするごとに、彼の痩身なだが骨太な身体は慇懃《いんぎん》に前こゞみになつた。それはこの身動きと言葉とがぴつたりとくつつき、いやそれ以上に全く同一物と化したやうな趣があつた。
 徳川末期に生れ、慶応、明治、大正と社会的な大変動の中を生きて来ながら、直造の生涯は世の多くの庶民と同じにその根底は単純き
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