モんだん[#「ふんだん」に傍点]にあるから、そこで、ああいう形の文明が発達したわけで、日本ではちょっとした物がすべて「手づくりの木製である」と教えてやると、「何という高級な!」なんかと心から恐れ入っている。ところが、その本国の日本には、何からかに[#「かに」に傍点]まで石や鉄で作らなければ文明と思わず、しかも機械製でなければ承知しないで、それをもって西洋風だと信じている感ちがいの亜流者が多いから笑わせる。これはとんでもない穿《は》き違いだ。ほんとに西洋流で往こうと言うなら、すべからく「|手作り《ハンド・メイド》」を感謝し、木製物を尊び、そうして日本の生活の手近ないたるところにその極致を発見して、大いに得々とすべきである。これは、私のよく謂う「西洋を知り抜いて東洋へ帰る心」に、形だけにしろ、一脈通ずるものがあるのである。
ところで、理窟は第二に、帰国の日が近づいたのに書籍を積み出す方便がなくてすっかり困ってしまった。仮りに一個十円でもいいとしたところで、十箱も作らせると百円である。おまけにどう急がせても間に合いっこないのだ。さんざん考えた末、これは新たに造らせるからこんなに高価《たか》
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