形の小エプロン――そんなものが瞥見される。
 彼女らは先を争って戸口から走り出てくる。キモノが宙に飛んで、皮膚の大部分に直接陽が当る。が、慣れた光景とみえて、誰も何らの注意を払おうとしない。ある一軒の家からは、純粋のあらびや女がふたり、瘠《や》せこけた両腕を伸ばして何か盛んに我鳴り立てた。英語の解る御者に訊くと、土地特有の生ぬるいビイルを一杯ずつ飲ませろと言ったのだそうだ。
 この恐るべきポウト・サイドの後宮《ハレム》をPASHAのごとく一順して、私たちは港へ帰った。
 あらゆる天候によごれたSS・H丸の姿が何と有難く見えたことよ!
 午後一時、石炭補充を終って出帆。
 がら・がら・がら・がら――錨を上げる。
 これから、今夜|晩《おそ》くまでスエズ運河がつづく。
 右舷《スタボウド》の岸を船とならんで、白く塗ったカイロ行きの汽車が、沙漠と熱帯植物を背景にことこと這っていた。

     6

 紅海の或る日。
 蒸し殺されるように暑い。これでも今日は幾分涼しいほうである。
 速力。十三|哩《マイル》半。
 南三八度E。
 北風。軽風2。
 温度。大気八四度。
 海水度。八一度。
 晴
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