ッ時に発している。
『上陸なさいますか。』
『上陸なさいますか。』
『は。ちょっと。』
『は。ちょっと。』
 向うでもやってる。
『上陸なさいますか。』
『上陸なさいますか。』
『は。ちょっと。』
『は。ちょっと。』
 相手の返事を聞かないうちに反撥するように別れる。と思うと、出あい頭《がしら》にまた「上陸なさいますか」なのだ。何という軽跳な、無責任に晴れ渡った寄港者の感情――それはそのままポウト・サイドの空の色でもある。
 後部の舞踏甲板は、欧羅巴《ヨーロッパ》人によって黄金の威力を実示された被征服民族の商隊で一ぱいだ。
 狡猾な微笑で全身を装飾した宝石売り――独逸《ドイツ》高熱化学会社製の色|硝子《ガラス》の小片を、彼らは「たくさん安いよ」の日本語とともに突きつけて止まない――と、二、三|間《げん》さきからお低頭《じぎ》をしながら接近して来る手相見の老人――「往年|倫敦《ロンドン》タイムス紙上に紹介されて全世界の問題となれる科学的手相学の予言者バガト・パスチエラ博士その人[#「その人」に傍点]」と印刷した紙を、証明のため額に入れて提げている――と、絵葉書屋と両替人――これは英語で、
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