ッ声だった。私は、この、細い脚を持った蟻《あり》のような人たちの、驚くべき多数の努力を目前にして、同じような光景を呈したであろうピラミッド工事の当時を思った。
 そこで、私もいそいで、ジレットを揮い、コルゲエトの泡を吐き、オウトミイルに首を突っ込み、ヘルメットを頭に、追い立てられるようにA甲板へ出る。
 粉炭の濃霧を通して、ポウト・サイドは砂漠の蜃気楼だ。
 そして甲板は、いつの間に乗船して来たのか、土耳古《トルコ》人・埃及《エジプト》人・あらびや人の大雑沓である。とるこ帽・金いろの腕輪・赤銅の肌・よごれた白衣・じゃっぱん大阪製|竪縞《たてじま》の木綿洋服・陽に光る歯・動物的な体臭――。
 そのあいだを縫って、久しぶりに陸地に昂奮した船客達が、眼の色を変えて右往左往している。畢竟《ひっきょう》人間は土の上の生物だ。一刻も早く大地を踏みたい衝動に駆られて、みな無意識に脚がむずむず[#「むずむず」に傍点]しているのだ。一同誰もかれも、非常に重大な要事をもって人を探してると言ったように、そのくせ、ただわけもなく甲板を歩きまわりながら、先刻から何度も訊き合った無意味な質問を、会う人ごとに、双方
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