s場を見、郊外の国境を越えてちょっとすぺいん領へ這入り、山下の道を一巡して帰船する。
 出港後間もなく、岬をかわしたところで、横浜からマルセイユを経て来て、これから倫敦《ロンドン》へ行こうとしている同じNYKのH・Z丸に出会した。巨船二艘、舷々|相摩《あいま》さんばかりの壮観である。
 往き大名と帰り乞食が洋上に挨拶する。マストに高く信号旗がひるがえるのだ。
 赤と黄の斜《ハス》の染分け・白に青の先が切れ込んだの・赤白青の縦の三色――この三旗はそれぞれにO・A・T羅馬《ローマ》字を示し、O・A・Tはここに一つの意味を綴る。I am glad to see you,「お眼にかかって嬉しい」というのである。これに対する応答――T・D・Lの三つの旗。即ち Bon Voyage !「安全なる御航海を祈る」。
 同時に相方《そうほう》で、Y・O・Rの旗を上げる。「多謝《サンキュウ》」である。そして、擦《す》れ違う。
 海の通行人は騎士のごとく慇懃《いんぎん》だ。が、全船員は各自その船べりに重なり合って、船同士の儀礼を破壊して日本語で叫びかわす。
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わあい!
やあい!
しっか
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