瘁tけた土と、緑の樹木と、無線電信の高柱と、山鼻の大岸とをもったジブラルタルが海の夢のようにぽっかりと浮かび上った。
私は、小学六年生の頃に、何てことなしにこのジブラルタルという地名の響きが無性に好きで、当時の小学生らしくこんな短歌みたいなものを作った記憶がある。
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赤き帆のヨット走れり波分けて
ジブラルタルの夏の海をば
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というのだ。私が妻にこの話をすると、彼女は断髪を薫風に与えて微笑した。
夏ではないが、このへんはもう夏げしきである。ヨットも走っていた。英吉利《イギリス》海軍の快走艇《ヨット》だ。が、幼い歌人の幻滅にまで、帆の色は赤ではなかった。陽に褪《あ》せて白っぽくなったカアキイいろだった。
同船の誰かれ――日本人学生N氏とN氏夫人の英吉利婦人、T大学医学部教授T博士、などとみんな一緒に上陸して、出帆までの町の内外をドライヴする。坂・植物・狭い|大通り《メイン・ストリイト》・不可思議な活動常設館・両側の土産物店・貝細工・卓子《テーブル》掛け・西班牙肩絹《スパニッシュ・ショウル》・大櫛・美人画・闘牛士装束など。ムウア土族の
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