ニしている放浪者」の、すこしは殊勝なこころもちのなかに発見するであろう。
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がたん!
がたん!
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と機関が唸《うな》る。
船という船のなかで、この倫敦《ロンドン》発横浜行きNYK・SS・H丸――私がそれに、何の理由もなしにほとんど運命的な約束をさえ見出しかけていると、彼女も眠れないとみえて、下の寝台で寝返りを打つのが聞えた。
『どうしたい。』
『ええ。大変な浪。』
『もうビスケイ湾かしら――。』
『いいえ。』
『そうだ。ビスケイはまだだろう。』
『あしたの夕方からですって。』
4
翌日、曇り。
午前十時、非常時の予行としてボウト・ドリルと消火演習がある。船客一同救命帯を着用してA甲板上のそれぞれの短艇《ボート》位置へ整列する。汽笛や銅鑼《どら》が暗い海面を掃き、船員達が走り廻り、マストには発火現場眼じるしの旗があがり、稽古とは知っていてもさすがに好い気もちはしない。
めいめい紙片を渡される。
「海上の安全を期するため、船客各位に対する重要告知」とあるから、何を措《お》いてもあわてて読んでみる。
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