年齢に達した娘たちの大集団・独逸《ドイツ》から出稼ぎに来てる首の赤い給仕人の群・舌と動作の滑《なめら》かな大詐欺師の一隊――現世紀に逆巻く唯物|欧羅巴《ヨーロッパ》の男女の人生探検者が、おのおの智能と衣裳と役割を持ち寄って、この一冬のMORITZに雪の舞踏を踊り抜く――それは、夜を日に次《つ》ぐ白い謝肉祭《カアニバル》なのだ。
 したがって、物価が出鱈目な点でも、季節のサン・モリッツほどのところはあるまい。何しろ、高ければ高いほど金の棄《す》て甲斐《がい》があるという連中ばかり来るところなんだから、その法外さが随一なのは無理もないとして、近い例が、倫敦《ロンドン》で一|打《ダース》入り一箱十|片《ペンス》半のXマス爆烈菓子が、ここでは一個につき二|法《フラン》――瑞西《スイツル》の法《フラン》だから、約一|志《シル》六|片《ペンス》――もすると、眼を丸くして話した善良な老婦人があったが、これも考えてみると、妻の誕生日|贈物《プレゼント》に飛行機に飛行士をつけてやったり、リンクでちょっと相識になった人が帰ると聞いて、こっそり買い入《いれ》た最新型の自動車を出発の朝ホテルの玄関へ廻して置い
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