ュまでも私達の概念する結婚ではないのだ。なぜならそれは、瑞西《スイツル》のウィンタア・スポウツに無くてはならない、あの「かたい雪」の部に属する近代恋愛なのだから。だから、例の、がらす玉のように妙にぎらぎらする嫉妬の要もあるまいし、多くのシチュエイションを手がけて、激しい交通に踏み固められた、この場慣れた二人のあいだに、それは、「大戦後の新道徳」によって、勇壮に滑走すること請合いだ。そして、よりいいことには、相互の理解の上で、いろんな恋愛技術のSTUNTが行われるだろう。クリステだの・ステムだの・V字形だの、と。
 冬の聖《サン》モリッツは、両大陸の流行の大行列だ。
 倫敦《ロンドン》と巴里と紐育《ニューヨーク》の精粋が、ウィンタア・スポウツに名を藉《か》りて一時ここに集注される。
 ――大小の名を持つ人々・名をもたない人々・新聞の写真によって公衆に顔を知られている紳士と淑女・知られてない紳士と淑女・女優・競馬騎手・人気作家・あまり人気のない作家・離婚常習犯人・商業貴族・生産のキャプテン達・彼等の家族中のJAZZ・BOYSと・反逆年齢に達した娘たちの大集団・独逸《ドイツ》から出稼ぎに来て
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