フで弱らせられる。それから、これだけは、どうしても大きなホテルへ行かなければ遣《や》り切れない一つの理由は、お風呂である。スポウツで汗をかいて来ても、直ぐにお湯に這入れないとあっちゃあ、殊に日本人は往生する。
 全く瑞西《スイツル》のステイムは、よくこれで失敗する旅客があるので有名だ。倫敦《ロンドン》や巴里《パリー》のつもりで寝てしまえば要らないだろうというんで、すっかり閉めてしまうと、パイプの運行が停まって湯が冷めるもんだから、夜が更けるにつれて凍り出すようなことになる。いわんや、ほかの国の気で、寝る前に窓でも開けておこうものなら、寒さのためパイプが破裂すること請合いだ。先年ルケルバルドでこのステイム・パイプがホテルの屋根を吹き飛ばしたことがある。あとからナイアガラのように水が噴き出て、不幸な止宿者一同は、難破船の乗組員みたいに泳ぎながら、村役場の出した救助ボウトを待たなければならなかった――なんかと、まさか、それ程でもあるまいが、ホテルのポウタアが話しているのを聞いた。が、これも、考えてみると、外国人には間違い易く出来ているのである。なぜかというと、ステイムの廻転面にある Auf 
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