ネがら、夜が更けて、やがて、夜の明けるのを知らない。
 例えばこの、オテル・ボオ・リヴァジュのバワリイKIDS大ジャズ・バンド。
[#ここから2字下げ]
Was it a dream ?
Say, was it a dream ?!
[#ここで字下げ終わり]

     6

 寒い国のくせに、どういうものか煖※[#「火+房」、288−5]の設備が感心しないから、瑞西《スイツル》のホテルは、来た当座は、誰もあんまりいい気持ちはしないらしい。もっとも、いぎりす人なんかがよく行くビイテンベルヒのレジナ・ニパラスあたりは、彼等の随喜する薪《まき》を焚く炉が切ってあるけれど、そのほかの場所では、大がい痩《や》せこけたステイム・パイプが部屋の片隅に威張ってるだけだ。それも、約束どおり働かなかったり、或いは逆に、蒸気が上り過ぎて室内が温室のようになったりして、とかく、この瑞西《スイツル》のホテルのステイムには非道《ひど》い目に会うことが多い。スプルウゲンでは、ホテルの一室ごとに中央に大きなストウヴが据え付けてあって、煙突が屋根をぶち抜いている。あまり美的でないと同時に、これは塵埃《ほこり》を立てる
前へ 次へ
全66ページ中46ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング