》の冬の瑞西《スイツル》のなかでも最上級のブルジョア向きと見なされている土地である。そのため、大概の人が怖毛《おじけ》をふるって、近処の村落に宿をとる。そして、そこからサン・モリッツへ通うんだが、このサン・モリッツの附帯地域中異色のあるのが、モリッツから一停車場|下《くだ》った、五千六百五十六|呎《フィート》の高さに、谷を挟んで巣をくっているCELERINA村だ。幾分経済的でもあり、第一気安だろうと思って、私たちも最初はこのツェレリナへ行ったのだったが、同じ考えで人が殺到して来るのと、ツェレリナ自身が近くにサン・モリッツを控えている利益を意識して、抜け目なくその好立場を効用化してる関係上、事実は、かえって中心のサン・モリッツのほうが遥かにぼら[#「ぼら」に傍点]ないことを発見したので、二、三日してあわててそっちへ移ったのだった。そして、これも、同様の経験から四、五日前にツェレリナを逃げ出して来た許《ばか》りだという、かのロジェル・エ・ギャレに会ったのである。
しかし、ツェレリナは、あの有名な聖《サン》モリッツのCRESTA・RUNの競技の終点に当っているし、スケイトもスキイも相当の設
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