チかの娘を、自分が仲に立って結婚させて、両方の親達からお礼を貰う一つの商売でした。じっさい、この結婚口利き業が、祖母の収入の殆ど全部ですのに、自分の孫である私の結婚となると、いま考えてみても可笑しいほど、祖母はむき[#「むき」に傍点]になって反対したものでした。それも、私を手離すのが淋しかったのと、もう一つは、あり勝ちな軽い嫉妬の形を変えた心もちからだったのでしょうが、結婚の仲介を稼業にしているくせに、或いは、それを稼業にしていればこそ、かえって、と言い直しましょうか、とにかく私の縁談には、冷淡以上に、惨酷なほどの態度をとっていましいた。そのために、言い寄ってくる男たちもいつの間にか遠のいて、私は、大きな身体《からだ》に子供のような服を着せられて、相変らず牛の乳をしぼったり、枯草を乾したりなんかばっかりさせられて、いました。もし若い男が私に話しかけでもしようものなら、祖母は狂気のように飛び出して行って、顎髯を振る、指を曲げて様々な悪霊の形を作って見せる、さては杖をかざして、ブリトン語で呪文を唱えながら白眼《にら》みつける、という始末ですから、とうとう村中の男が、誰も、私には、冗談は愚か
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