ぬか結婚するかどっちかだと明言したものです。お爺さんは三度も女房に別れた人で、もう一ぺん結婚するくらいなら、お葬式のほうが増しだなんて言っていましたが、それがどうでしょう! 次ぎの月の六日には、どこからか渡って来た頭髪の赤い、若い女と一しょになって祖母のところへお礼に参りました。これには村中が大笑いに笑って、聖《サン》マルネリの寺院に、まるで灯の山のようにお蝋燭が上りました。
ブリタニイの女は、牛に似ています。
その牛のようだった私も、いつしか若い男達の眼を惹くようになりつつありました。牛を教会へ連れて行って、お水をかけてもらう日があります。これが大変です。何人もの男たちが、私の牛を引いてってやろうとまるで喧嘩のように申し出るのです。聖《サン》ジャンの祭礼の晩には、村の広場に篝《かが》り火を焚いて、青年たちが夜どおし真鍮《しんちゅう》の盥《たらい》を叩く例です。が、私だけは家に閉じ込められて、ただその騒ぎを遠くに聞いていなければなりませんでした。
なぜって、お祖母《ばあ》さんは、カルナク村の結婚世話人《マッチ・メエカア》をしていたからです。これは、年頃になったどこかの息子と、ど
前へ
次へ
全66ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング