それきり、私は、彼女に会わないのである。

     7

 羅馬《ローマ》のホテルから廻送して来た、彼女の手紙を、私は、ナポリで見た。
『私は、あなたに報告しなければならない、一つの誤謬を発見しました。それは、いつか申し上げた、私の尾行者に関してです。彼は、確かに、私を尾行していました。けれど、彼の尾行の意思は、決して私が思ったような、政争的な、物騒なものではなかったのです。あなたは、羅馬で、スカラ・サンタという寺院の内部を御覧になったことがあるでしょう。あそこの正面の大理石階段は、十字軍の末期に、エルサレムから持って来たもので、基督《キリスト》が、ピラトの審判を受ける時に上った階段であると伝えられています。ですから、参詣の女は、あの階段だけは、必ず跪《ひざま》ずいて昇らなければならないことになっているのですが、あの、急な二十八段を膝で上るのですから、洋袴《スカア卜》の短い、この頃の若い女などは、随分余計な苦心をしなければなりません。
 以前はよく、男達が、それを下から見上げていて、これという狙いを付けたものです。そして、お寺から、その女を尾行して行って、住処《じゅうしょ》を突
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