いて、身を起したとき、私は、停車している車室のカアテンに日光の波紋を見た。
 そして、外には、羅馬停車場《ローマスタツィオネ》の喧噪な構内が、静止していた。
 が、コンパアトメントは、私だけのものだった。そこには、国際裸体婦人同盟員と彼女のアストラカン外套も、若いルセアニアの商人と彼の|嗅ぎ塩《スメリング・ソルト》も、見られなかった。あるのは、ただ、ルセアニア人が残して行った微かな竜涎香《アンバア》の薫りと、一晩中密閉されていた彼女の体臭とが混合して、喫煙室のそれのように、重く揺らいでいる空気だけだった。
 二人は、到着と同時に汽車から走り出て、急いで、ホテルへ向ったのであろう。真面目顔のホテルの番頭《クラアク》は、二人を夫妻として登録して、一室の鍵を渡すだろう。微笑が、寝不足の私を軽くした。
 私は、酸素を要求して、窓を開けた。
 金色《こんじき》の風が、歓声を上げて、突入した。何と、爽やかな羅馬《ローマ》の朝!
 私は、ここで、歴史の真ん中へ降り立つのだ。
 直ぐにナポリ行きへ乗換える人や、朝だちの旅客のために、プラットフォウムには、駅売りの呼び声が縦横に飛び交していた。
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