メリカ》から来た、下着の旅行販売人《トラヴェリング・セイルスマン》にも、インクの流れるように能弁な万年筆の行商人にも! それでも、はじめのうちは、人に自分を見せることの政策的な必要と利益から、今よりももっと多量に、俳優的態度で引見することを好んだものです。近頃は、それ程でもありませんが、今は外交関係から、殊に亜米利加人に盛んに会いつつあるということです。』
『彼は、亜米利加へ移民を送ることを止《よ》して、そのかわり、仏蘭西《フランス》との国境地方あたりへ国内植民を始めているそうではありませんか。そのために、仏蘭西が、すこし警戒し出したというような噂も聞きましたが――。』
『ブルジョア国家という、現在の人類生活の単位は、その人類である私達の日常生活には、何らの交渉もない事件のために、しじゅう忙がしがってばかりいるのが、その特性です。』
『法王庁とムッソリニは?』
『あなたは、いつの間にか、私を「訪問」していますね。結構です。彼は、三月の総選挙に、加徒力《カトリック》教徒の人気が入要なはずですから、悦《よろこ》んで、その前に、ヴァテカンと伊太利《イタリー》との握手の世話役に立つことでしょう
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