。それが私を、さっそく勇敢な独断家にしてしまった。
『そうすると、あらゆる意味での装身を景品の一つにして、こんなにまで個人間の自由競争を亢進させてその利をはんでいる狡猾な資本主義もお洒落な都会人に関する限り、その魅力の半分を失くすることになりますね。』
『勿論です。』彼女の顎が襟の開きを打った。『各方面から切り崩さなければならないほど、資本主義は、あまりにしっかり[#「しっかり」に傍点]無智な人間を把握しています。ちょっと考えても解ることではないでしょうか。近代の女が、まだ着物を着てるなんて、何という古い醜さでしょう! 彼女らの言語でいっても、それは実に嗤《わら》うべき流行遅れなのです。しかし、何事もはじめの間は厄介なものです。一番いけないことは、男が、女の裸体に慣れていないことです。けれど、これは無理もありません。が、そのうちには、マデレイヌもボンド街も第五街も、通行の裸かの女で充満する日が来ることでしょう。それが、国際裸体婦人同盟の理想なのです。これは必ず実現するにきまっていますが、そうなった日、女を見る男の眼も、自然変って来なければなりません。一般の女を、女としてより先に、まず人
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