間として眺めて、そして、一般の女のなかからさえ、性ばかりでない、もっと価値あるもの、もっと智的なものを探し出そうとするでしょう。性は詰《つま》りません。お互いですもの。』
つまり彼女によれば、国際裸体婦人同盟は、この、世紀的に古い誤謬に毒され切っている男達を、その可哀そうな状態から救い出すための、親切な教育団体だと言うのだ。私達は、彼女の説に、異常な恐怖と好奇と感謝を感じながらも、それを表面に現わさないだけの努力を必要とした。すこしでも、「この瞬間の傾向」の背後に立っていると思われたくない虚栄心が、私たちという二人の男を強く支配している事実に、私は気がついていた。したがって、近く彼女が示そうとしているであろう彼女自身の実証に対しても、私たちは、それを待ちあぐんでいることなどは気振《けぶ》りにも見せなかった。実際、若いルセアニア人は、そんなところは何|哩《マイル》も先に行ってると言ったように、しきりに欠伸《あくび》をしていたし、私は、出来るだけ詰らなそうに、度《た》びたび窓の外を覗かなければならなかった。硝子《ガラス》が一面に塩を吹いて、何も見えはしなかったけれど。
私は、汽車の両腹
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