しようとした。私たちは、私達も今ちょうどそういう話を始めるところだったからと言って、彼女に、続けることを頼んだ。
『同盟の信条は、ごく簡単です。年中裸体で生活すること。これだけです。但し、外套と靴下は特別に許されることになっています。外套は、必要に応じて寒気を防ぐため。そして靴下は、跣足《はだし》で歩いていい設備が、まだ多くの都市に出来ていないものですから、仕方なしに靴をはく、その附属品としてです。が、そういう方面の訓練の全く欠けている、教養のない男達の眼から、私たちが裸体でいることを隠すために、私達は、四六時中どんな要心を強いられていることでしょう! 余計な注意を惹いて悶着を起したくないからです。それでも、私たち国際裸体婦人同盟の会員にとっては、裸かでいるほうが遥かに自然なのです。近代の女は、現世紀の狂気じみた性の騒ぎには、飽き飽きしました。性のことなど、問題にすべきではないのです。誰が、食べ物のことをそう喧《やかま》しく言う人があるでしょう? 性は、はじめから種族的な「縦の本能」に過ぎません。人間には、もっと社会的な「横の仕事」がたくさんあるはずです。ところが、この簡単な「性」に神
前へ 次へ
全67ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング