ノで客を探しました。その夜もそうでした。しかし、思いどおりに紳士をつかまえることの出来た彼女は、安心で気がゆるんだせいか、それともコカイン注射の有効期間が切れて彼女の有機が一時的に分散したのか、とにかく、彼女は、ホテルへ行く途中でああして意識を失って倒れたのです。が、彼女の職業本能が、紳士を捉えている片手だけは離させませんでした。掛り合いになって名の出ることを恐れた紳士は、「23」の出現を何よりの好機会に、地上の彼女を「23」に押しつけて、雲隠れしたわけでした。同伴の動機があまり紳士的でないので、或いは彼は、「23」を探偵とでも思ったのかも知れません。これで気がついて、「23」がポケットから先刻《さっき》紳士の押し込んで行ったものを取り出して見ると、それは書物のようなルイの紙幣束でした。
この時からです。ふたりが新しい共同の商売をはじめたのは。
つまり、この偶然事から思いついたのですが、彼らは、何らの資本なしにこのモンテ・カアロで「白い丸薬」と「緑色の羅紗」とを相手に一生遊び暮すだけの財政を、しごく容易に二人のあいだで保ち得ることに気が付きました。それは、その晩の過程《プロセス》を
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