ツの気まぐれによって「灰色の石鹸」と「扣鈕《ぼたん》」がさまざまに動き、そのたびに或る人の財布はトランクのように大きくなり、ある人のぽけっとは夏の住宅区域のように空《から》になり、自殺する女や発狂する男や、製粉工場を手離してもう一番と踏み止まったり、勝った金で逸早くピアリッツの家《うち》を買って勇退したり、とうとうホテルを夜逃げして、来る時は自動車の窓から見て通ったコルニッシュ道路に長い月影を引きずるものも出てくれば、それをまた途上に擁して毎晩「卓子《テーブル》」で見た顔が拳銃《ピストル》を突きつけるやら――「みどり色の誘惑」は時として意外な方向と距離にまで紳士淑女をあやつって止《や》まない。
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まるけ・むしゅう!
まるけ・むしゅう!
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博奕においては夫婦といえどもふところは別である。
で、軍資と祝福を分け合ったのち、私達はその人混みのルウレット室で銘々の信ずる道に進むことにした、五時間後に出口で落ちあう約束。
6
五時間後。
深夜の 〔Le Cafe' de Paris, Monte Carlo.〕
そこは音楽よりも
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