宴刀tの規定だった。幾つもの台が整然と並んで、そのすべてが顔いろを変えた紳士淑女で一ぱいだった。肩から背中まで裸の夜会服《デコルテ》にタキシイドと燕尾服が重なり合って盤を覗いていた。長方形のルウレット台には緑いろの羅紗が敷き詰めてあった。これが歴史的に、そして物語的に有名な「モンテ・キャアロの緑の LURE」なのだ。この金銭の遊戯を司《つかさど》って、幾多の悲劇と喜劇が衝突するのを実験して来た証人である。卓子《テーブル》の中央は両側からくびれ[#「くびれ」に傍点]ていて、そこにふたりの取締人《クルピエ》―― Croupier が向い合って座を占める。その手元には出納の賭札《ブウルポア》が手ぎわよく積まれてある。二人のクルウピエの中間に廻転盤、それを挟んで左右に、線と数字の入った|賭け《ステイキ》面がふたつ続いている。人はぐるり[#「ぐるり」に傍点]とその両方を取りまいて、つまり一つの卓子《テーブル》で同じゲームが一時に二つ進行しているわけだ。クルウピエの一人は右側を支配し、他は左を処理する。客は両替《シャアンジュ》で換えて来た「灰色の石鹸《サボン》」――大きな金額の丸札――をそのまま賭
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