スものにとって、「緑色の羅紗《らしゃ》」の手ざわりは一生|峻拒《しゅんきょ》出来ない魅惑なのだ。恐らくそのうちに彼女は女性の誇りまで「木に引っかけ」たのち、ルウレット台の一つで勇壮に自殺することであろう。今のように「豚!」と大声に叫びながら!――しかし、そのためにこのキャジノでは、自殺者に対するあらゆる人員と設備を調えて待っているのではないか。Tra−la−la !
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まるけ・むっしゅう!
まるけ・むっしゅう!
ら・ぼうる・ぱっす!
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退屈で、そして冷やかな台取締《クルピエ》の声だ。
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Quatorze rouge, pair et manque
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『十四! 十四! 赤、偶数、小!』
『三十一! 三十一! 黒、奇数、大!』
あちこちにこの|呼び声《アナウンス》が転がっていた。そのたびに台取締《クルピエ》の棒の先で負けた賭札《ブウルポア》が掻《か》き集められ、勝った|賭け《ステイキ》へはそれぞれの割合いで現金代りの札が配られた。どの卓子《テーブル》も廻円盤《ルウレット》はたいがい最低十|法《フ
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