ゥを饒舌と昂奮と美装とが共通の興味のために集合し、練り歩き、揺れ動いていた。そこにはヴァテカン美術館のそれにも劣らない一面の壁彫刻が微細に凹凸《おうとつ》していた。|垂れ絹《ドレイパリイ》はすべて五月の朝のSAVOY平野の草の色だった。壁画が霞んで、円天井の等身像は聖徒の会合のように空に群れ飛んでいた。いたるところに大笠電灯と休憩椅子があった。大笠電灯は王冠形の水晶と独創とで出来ていた。そして、金の鎖を蔓《つる》に持ったフロリダ黄蘭のように宙乗りをして、そこから静かに得意の夢を謳《うた》いつづけていた。休憩椅子は海老茶《えびちゃ》の天鵞絨《ビロード》の肌をひろげて、傍《そば》へ来る女の腰をしっかり受取ろうと用意していた。ケルンの大伽藍《だいがらん》の内部を祭壇のうえの奥の窓から彩色硝子《ステンド・グラス》をとおして覗くような、この現世離れのした幽艶なきらびやかさが刹那の私から観察の自由を剥奪した。が、私の全身の毛孔《けあな》はたちまち外部へ向って開いて、そのすべてを吸収しはじめたのである。私は駐外武官《ミリタリ・アタシエ》のようにタキシードの胸を張った。
La Salle Schmi
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