「るのかも知れなかった。すると、いまの短袴《スカアト》組はそれを通り過ぎたまたまた一つ未来の時期を掴んでいるのだと主張するのである。
 賭博場《キャジノ》の建物は航空母艦のように平たく長かった。正面《ファサアド》に赤い満月が懸っていた。それは大型電気時計のように出来ていて、針が動いていた。
 大玄関を這入ると、私たちはすぐ左手の広間へ行かなければならなかった。そこは一応入場者を審《しら》べて切符を発行するところだった。その部屋は合衆国高等法院のように出来ていて、ポウル・ボウの税関吏のような疑い深い、そしていつも突発事を待っている眼をした役員たちがとまり[#「とまり」に傍点]木の上に止まっていた。彼らは低声に出入りの女達の身体つきに関して際限のない冗談を交換するよりほか用もない様子だった。そこで私たちは旅行券の検査を受けた。役人は私達に入場を許可するかしないか長いこと相談したのち、はじめから解っていたとおりに、許可することに決定した。
 私は網膜のなかで光線と色調とアリアン人種と、demi−mondaines の游弋《ゆうよく》隊とが衝突して散った。麺麭《パン》屋の仕事場のような温気のな
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